本「東芝原子力敗戦」

高松に帰省した折、義兄から「東芝はどないしてあなんなったん?」
と聞かれ「ボクも知りたくて本を買ったばかり」と答えたのがこの本。
東芝原子力敗戦
時系列でみると始まりは2006年。
東芝が米の原発製造会社ウエスチングハウス(WH)を買収。
2011年東日本大震災、東電福島第1原発事故
2015年4月東芝の粉飾決算発覚。
2016年。WHで2、600億円の減損を計上。白物家電部門を売却。
2017年。WHグループで7、125億円の減損を計上。半導体メモリ部門売却。

そもそも原爆の原料であるプルトニウムは自然界に無い。
天然ウランを核分裂させ抽出するのだがその過程で莫大な熱が発生する。
その熱をエネルギーとして利用したのが原子力発電。
しかし原発建設には莫大な金がかかり、軍事利用抜きには採算が取れない。
1957年WH社が米国初の原子力発電を稼働させ、日本も中曽根と正力が
中心となって原発導入を画策、1965年東海村原発が誕生した。
そして東芝、日立製作所、三菱重工業による国産原発が悲願となった。
1971年東京電力福島第一原発が運転開始。
1号機は米GE社製。2号機はGE+東芝。3号機は東芝。4号機は日立。

未来のエネルギーとして華々しいデビューを飾った原発だが、
1979年、米スリーマイル島原発事故、1986年ソ連チェルノブイリ原発事故
を受け、安全コストが膨らみ、「原発は儲からないビジネス」と囁かれ始めた。
また、1991年ソ連崩壊による「冷戦」終結にともないプルトニウム生産という
原発軍事利用の存在意義が希薄となった。原子力産業は世界的な再編の
波にもまれGEは原子力事業を大幅に縮小、WHは売りに出された。
しかし2000年を境に風向きが変わった。地球温暖化問題である。
炭酸ガスを排出しないクリーンなエネルギーとして見直され
原発ルネッサンスと言われた2006年にWHを買収したのが東芝。

その年、日本の経済産業省は「原子力立国計画」を発表。
その中身は「原発のパッケージ型輸出」、つまり原子炉を東芝、日立、三菱が作り、
運転ノウハウは東電など電力会社、ウラン調達は総合商社が担当する。
計画立案したのは経済産業省の今井尚哉。安倍晋三の側近中の側近である。
第2次安倍内閣、アベノミクスのシナリオライターの1人でもある。
つまり東芝の原子力ビジネスとは実は国策の実行に他ならない。
WH買収直前に丸紅が降りたため、東芝は馴れないウラン調達まで手がけ、
後々負債を増やす事となる。

WH買収は実は最初はうまくいっていた。世界各国で原発受注を増やした。
ところが2011年の、福島原発メルトダウン事故で全てが吹き飛んだ。
アメリカの原発安全基準は大幅に訂正され、受注した案件の設計見直しも
うまく進まず東芝の原子力事業は暗礁に乗り上げる。
それでも今井らは「原発重視」を国内外に宣言し強気の姿勢を崩さない。
東芝も「国策案件」だからと暴走をやめなかった。
どんどんふくらむ損失を粉飾決算で誤魔化そうとしたのが
2015年の粉飾決算発覚、東芝問題の真相らしい。

ちなみに、福島以降、世界は原発に見切りを付けた。
シェールガス(海底天然ガス)の発見により、今後30年間、
自然エネルギー利用が軌道に乗るまでの「つなぎエネルギー」の目途がたち、
原発の出番は完全に無くなった。あとは廃炉ビジネスが残るだけ。
原発の廃炉は30年~50年がかりのため国家が処理する他は無く、
英国を始め原子力産業は、国営化で再編中なのだという。
日本だけが何故か原発存続のガラパゴス列島を目指している。

結局東芝は白物家電と半導体事業を売って原子力を残した。
その命運は近いうちに明らかとなる。逆にすればよかったのにね。
2017-12-17(Sun)
 

本「サイバー戦争論」

サイバー戦争ってどこまで進んでいるのか知りたくて買ってみた。
サイバー戦争論
著者はもと陸上自衛隊システム防護隊初代隊長。
読んでみるとサイバー攻撃と防御に関する総合学習の趣き。

いま世界最強なのは核兵器だし核戦略が世界を支配しているが
これからはサイバー戦略の時代。
サイバー攻撃を受けてシステムがダウンすれば、核兵器そのものが使えない。
しかもサイバー攻撃は攻撃者の特定が困難でなおかつやりたい放題。
防御する側は防御に精一杯で反撃できないばかりか、停戦というものは無く
いつかはやられる運命。しかもサイバー攻撃者は国家とは限らない。
民間人ハッカーが活躍できる。マルウェアー(不正プログラムの総称。ウィルス含む)
を作成して敵のシステムに侵入し外部からシステムを勝手に書き換えたり操ったりする。

実例として2008年のロシア・ジョージア(グルジア)戦争。
愛国心に燃えたロシアのハッカーたちがロシア軍の戦闘と呼応して
ジョージア大統領府、国防省、メディア等にサイバー攻撃を展開した。
その内容は、システムダウン攻撃だけでなく、ウェブサイト改竄、
スパムメール送付、ネットのゲートウェイ封鎖、なそなど。
これに対し、ジョージア人ハッカーたちも立ち上がり対抗しようとしたが
その呼びかけサイトはロシア人ハッカーたちの攻撃により潰された。

2013年韓国。主要放送業者3社と金融業者3社の内部端末PC
48,000台が使用不能になるという事件が起きた。
プログラムの書き換えによりパソコンが起動できなくなったのだ。
その目的は何か?大騒ぎになってサイバー攻撃を受けた事実を
韓国政府や世界中にアピールしたかったのではないか?
犯人は特定できないが、韓国政府は北朝鮮を名指ししている。

奇しくもこの年は金正恩が第一書記に就任した年。
「権力基盤を安定させるために彼らの祖父と父がやってきたのは
問題のない所に事件を起し、妥協すると見せかけて外国から
経済援助を引き出す事。
もっと効果的な国民へのアピールは米国大統領を会談に引きずり出し
外国から多額の援助・燃料・食糧を手に入れる事」

オイオイ、2016年8月発行のこの本は2017年の北朝鮮核兵器開発、
大陸弾道弾発射実験を予言していたのか?
それらに先立つ2013年北朝鮮はサイバー攻撃能力を世界に誇示していたのだ。
金正恩恐るべし。ただのデブではない。
2017-12-10(Sun)
 

本「闘う純米酒」

へえ、こんな本がったんだね。2006年に単行本2012年文庫化。
純米酒
埼玉県蓮田市の神亀しんかめ酒造7代目、小川原良征の奮戦ルポ
であり、杜氏や全国の蔵、飲食店をも巻き込んだ純米酒運動
とも呼ぶべき全国的な闘いの記録でもある。

始まりは小川原41歳の1987年。神亀酒造は全国で初めて
清酒製造量の全てを純米酒に切り替えた。

今ではピンとこないがそれのどこがそんなに凄いのか?
本の中の日本酒の歴史の薀蓄が非常にためになる。

戦前は、日本酒はすべて純米酒であった。
戦時下の凍てつく満州で、コメ不足酒不足に悩む関東軍が
「コメ以外の原料で清酒を作れ」と命令。
清酒をエタノール(醸造用アルコール=ホワイトリカー)で3倍に薄め、
さらにぶどう糖&人口調味料で味付けした3倍増醸酒を発明。
1949年戦後のコメ不足の中、国の政策として奨励し全国に広がる。
酒造法で、「仕込みの35%は3増酒でなければならない」との規制。
残りの65%は醸造用アルコールだけを添加した(アル添)本醸造酒。

1975年時点でも、日本酒の3分の1が3増酒、残り3分の2が本醸造酒。
純米酒はゼロ。そう言えば我々の若い頃は、日本酒の「剣菱」を飲めば
大人の仲間入りてな雰囲気があったが、その後剣菱には味の素が入っている
との噂が流れ人気は凋落した。噂はガセネタでなく、3倍増酒だったんだね。

その後2006年に、3倍増酒は製造禁止となるのだが、本醸造酒は今も
日本酒の中心で全国酒鑑評会などではアル添(本醸造酒)にしか出品資格はなく
50本もの金賞を乱発しているものの、純米酒は無視、蚊帳の外。

という事は、1987年時点で酒蔵製造の全量純米酒化というのは驚異的。
我々が、この10年くらいだろうか、普通に美味い純米酒を飲めるようになったのも
先駆者、小川原と神亀酒造のおかげかもね。
2017-12-02(Sat)
 

本「ブラック部活動」

大分県の剣道部しごき死事件について書かれているかと
思ったらそれは無し。
ブラック部活動
タイトルのブラックとは「ブラック企業」に因んでいる。
学校の先生は、仕事として放課後の部活動を指導していると
思われがちだが、部活動時間は教育課程外のあくまで自主活動。
なので給料は支払われないし、法的強制力もない事を、
当の先生方を始め、校長教頭も知らない人が多いという。

一般企業に例えるならば、「平日は毎日夕方に勤務時間を
終えてから2~3時間ほど無報酬で、できれば早朝も勤務前に
30分ほど無報酬で部活指導をしてほしい。
土日はできれば両日、少なくとも1日は試合などの指導をしてほしい。
この場合4時間を越えれば交通費込食費込みで¥3,600は
支払いましょう」というのが学校部活動の実態らしい。

県によっても違うが、先生は全員部活顧問を義務付けられ、
つまり自分の得意分野であればまだしも、全く素人の種目の
顧問をやらされる。生徒から馬鹿にされ、父兄から練習メニューを
強制されたりあれこれ口を出される屈辱が待っている。
大田原の山岳部合同雪山訓練で雪崩死した事件でも、
参加校のある顧問は素人の若い先生で、しかも雪崩死している。

それでも部活動に「ハマル」先生は多い。
自分が指導した生徒が勝つのはやはり気持ちがいいし、
部員一同の連帯感や達成感は授業では得られない。
また、父兄から感謝されたり一目置かれるのみならず
校舎に全国大会出場の垂れ幕が下がれば校長職員にも鼻が高い。
競合他校の有名指導者たちから認められ、練習試合の申し込みや、
試合顔の飲み会にも誘われ、自分の学校以外の交友関係を築くのは
理屈抜きに楽しいのだとか。

さて部活動をどうするか?
ネット交流で、部活顧問拒否の運動が一部先生方の
間で広がっているという。
著者の提言では、部活動は週3日に減らして全国大会も廃止。
ま、例えれば大学の部活ではないサークル活動のようなものか?
もっとやりたい人は、サッカーのように学校外の専門クラブに
所属して全国レベルを目指せばよろしいと説く。
成程、一理あるかもネ。
2017-11-26(Sun)
 

本「ヒトは<いじめ>をやめられない」

今年の10月に出たばかりの本だが、買ってよかった。
いじめやめられない
まず語られるのは、「いじめ=社会的排除」は、人間という生物種が
生存率を高めるために進化の過程で身につけた「機能」だという説。
つまり動物的に弱者である「ヒト」が生存するための武器として「集団」
を形成した。集団で協力的行動をとる事によって外敵から身を守ってきた。
その社会集団にとって最も危険なのは、集団内部の非協力的で異質な存在。
つまり集団を維持するために、異質な存在を排除する制裁行動、それが「いじめ」

なので「規範意識が高い」集団ほどいじめは起こりやすい。
最近では大相撲。体育会系のブラック企業や、連合赤軍事件
などが連想されるが、密度の濃い集団ほどいじめは起こりやすい。
女子の仲良しグループは暴力よりも村八分的な制裁を好む。
意外なのは文科系の吹奏楽部。音を合わせられない部員は
集団の和を乱す「排除すべき」対象となりやすいのだとか。

そして「いじめ」の本質は「間違っている人を正す」という制裁行動。
だからいじめている側は「正義」を行使している「快感」を得る。
直接の加害者でなくても、いじめの傍観者や、父兄、先生方の中には、
同じ理由で「裏切り者は許さない」という感情があり、なので彼らは
「いじめられる側にも原因がある」と考えがちだ。

一方学校や先生方にとっては「いじめ」を認めれば自分の評価を下げ、
しかも実態調査や報告書作成、保護者への説明など仕事量が増えるだけ。
加害者やその保護者は自分たちが「犯人扱いされた」ことに逆切れし、
モンスターペアレント化する。そもそも被害者よりは加害者の方が人数が多いので、
先生はクラスの生徒と保護者の多数を敵に回す事になる。

さていじめの解決策は?学校内に防犯カメラの設置、警察OBの見廻り、
学校や教育委員会以外の第3者機関へのいじめ通報システム構築など
が提案されている。
まあ、しかし「いじめ」が人間の本質ということであれば、対策は必要だが、
根本的解決は望むべくもない。あえて言えばその集団から逃げ出すのが
唯一の解決策。「逃げるは恥だが役に立つ」という事か。
2017-11-25(Sat)
 
プロフィール

元祖カーキー

Author:元祖カーキー
趣味は昔マラソン→今剣道。
'09 青梅・荒川・手賀沼・河口湖
'10 三浦・霞ヶ浦・高尾山・葛西臨海・小鹿野・陣馬山・河口湖
'11千葉マリン・青梅・三浦・葛西臨海・小鹿野・つくば
'12葛西臨海・成木の森・武甲山・渡良瀬・千葉スィーツ・つくば
'13千葉マリン・青梅・東京・古河・ハセツネ30K・夢の島
'14夢の島・足立フレンドリー
'15千葉マリン・東京・tokyoベイエリア・森林公園
'16品川・青梅・中野区剣道大会春季団体戦・秋季個人戦
'17剣道四段審査合格・全日本高齢者武道大会・中野区春季団体戦・秋季個人戦・東京都シニア剣道大会

<Home>

FC2カウンター
新しい記事の投稿
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる